遺産分割に関する見直し等

shiawase 2019年7月17日 水曜日

1:配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)

▶▷ 要点

婚姻期間が20年以上である夫婦の一方の配偶者が他方に対して、居住用不動産(居住用建物またはその敷地)を遺贈又は贈与した場合、原則として計算上、特別受益(遺産の先渡し)を受けたものとして取り扱わなくてよいことになりました。(=持戻し計算が不要)

 

 

(例)相続人 :配偶者と子2名(長男、長女)

   遺産  :居住用不動産(持分1/2)500万(評価額)

        その他の財産 2000万

   配偶者に対する贈与:居住用不動産(持分1/2)500万  の場合

 

▶▷ 現行制度

配偶者 1500万 = 1000万(遺産+贈与から算出)+ 500万(贈与)

生前贈与分は相続財産として取り扱われるため、配偶者が最終的に取得する財産額は、

結果的に贈与等がなかった場合と同じになります。

 

▶▷ 制度導入後

配偶者 1750万 = 1250万(遺産から算出) + 500万(贈与)

生前贈与分は相続財産として取り扱われなくなるため、配偶者はより多くの財産の取得が可能になり、また被相続人からの贈与等の趣旨に沿った遺産分割ができます

 

 

2:遺産分割前の払戻し制度の創設等

▶▷ 要点

現行制度では、遺産分割が終了するまでの間は被相続人の預金の払戻しができませんでしたが、

相続された預貯金債権について遺産分割前にも払戻しができる、下記2つの方策が創設されました。

この制度によって、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要への対応が可能になります。

 

①  家庭裁判所の判断を経ないで、預貯金の払戻しを認める方策

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、各口座ごとに下記の計算額までについては(同一の金融機関に対しては150万円限度)、他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができます。

 

 単独で払い戻しをすることができる額

  = 相続開始時の預貯金債権の額 × 1/3 × 当該払い戻しを求める共同相続人の法定相続分 

 

 

②  家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策

預貯金債権の仮分割の仮処分については、家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)が緩和されます。

 

遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合、家庭裁判所が預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、他の共同相続人の利益を害しない限り、預貯金債権の全部又は一部の仮払いが認められます。

 

 

3:遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

▶▷ 要点

遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人全員の同意(当該処分をしたものは不要)により、当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができます

 

 

(例)相続人 :長男、次男(法定相続分1/2)

   遺産  :預金 3000万

   特別受益:長男へ生前贈与 3000万

 この時、長男が相続開始後に、預金から1000万を引き出した場合

 

▶▷ 現行制度

引き出しがなければ、長男:次男 = 3000万:3000万 のところを、

引き出しを行ったため、長男 4000万 (生前贈与3000万+預金1000万)

           次男 2000万 (預金残額)

長男の利得額が大きくなり、不公平な結果となります。 

 

▶▷ 制度導入後

長男 3000万 (生前贈与3000万+引き出し1000万-代償金1000万)

次男 3000万 (残預金2000万+代償金1000万)

不当な引き出しがなかった場合と同じ結果になり、公平な遺産分割ができます。

 

 

出典:法務省HPより

 

 

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